岩井俊二監督、そして出演者に広瀬すず、松たか子など。
一味違う青春時代を描き出す岩井俊二が広瀬すずをどう美しく切り出すのか?
そして、『ラブレター』が好きな自分にとって、このタイトルに惹かれないわけがないと思い、映画館へと足を向けた。
だけど自分はあらすじとか何も知らずに、どんな映画かもわからずに、監督、主演者、ポスターの雰囲気だけを頼りに向かった。
簡単に言えば、行って正解だった。もちろん、厳しく言えば、矛盾するところはある。だけど、映画にそれを言うのはキリがなさすぎる。
そもそも映画は架空なのだから。
それ以上に惹きつけられる部分がたくさんあった。
これから言うことは少しネタバレする部分もあるかもしれないから要注意。
やはり、広瀬すずがきれいであり、時にかわいく、
松たか子もきれいで、
福山雅治もかっこよかった。
だけど、それ以上にストーリーが美しかった。
まず、自然に囲まれた川辺に三人の子供たちが映し出される。
二人が自然を楽しんでいるのに対し、一人影を背負っている少女がいた。
それが広瀬すず、演じる遠野鮎美。
そして、法事?のような場面が流れ、鮎美の母・美咲が亡くなっていることがわかる。
そこには鮎美の開けられない母からの遺書が置かれていた。
そして、美咲あてに来ていた高校の同窓会に松たか子演じる、美咲の妹・裕里がその事実を伝えようと出席時に、美咲に勘違いされ、初恋の人と出会ったことからこのストーリーは動き出す。
裕里は美咲のふりをして、初恋の人であり、売れない小説家の福山雅治演じる、乙坂鏡史郎に、夫に疑われていた裕里は、送り主のない一方的な手紙を書き続ける。
しかし、実家にいた際、送り主もかいた手紙に対し、乙坂は実家あてに返信の手紙を書く。
そこで実家にいた鮎美が、鮎美を心配して夏の間泊まっている裕里の娘・颯香(森七菜)と美咲のふりをして、手紙をかき、文通は始まる。
散りばめられた点がいくつもあり、クスッと笑う場面もあった。
何より、庵野演じる裕里の夫役が、演技はうまくないけれど、それがまた岩井俊二の世界観をつくりあげたといっても過言ではなく、心地よい感じがした。
そして、物語は進み、乙武と裕里は出会い、裕里が美咲ではないことを知っていたこと、そして、美咲はもうこの世にはいないことが明かされる。
乙武は最初の賞をとった小説以降、ずっと美咲への思いがずっと逃れられないことを裕里に明かす。
少しずつ序盤にちりばめられた点と点が繋がりはじめる
青春時代を演じる広瀬すずは美しく、森七菜もかわいく、ずっと若い神木隆之介には驚かされる。
いままでと少し岩井俊二らしさの映像ではなかったが、美しさは健在していた。
(むしろ、たくさん岩井作品を見ていたが、映画館で見たのは初めてだったと気付く。だからその差もあるのかもしれない。)
そして、その点がつながりはじめたとき、自分は音もなく涙が流していたことを認識した。
やがて、乙坂と鮎美は出会い、乙坂は遺影の美咲と対面を果たす。
そのころにはすでに涙が静かに流し続けていた。
自分の奥にあるかすかな記憶もリンクして、一つの映像を見ながら二つの映像を見ている気がした。
母の思い、娘の思い、そしてそれを知る乙坂の気持ち、乙坂と美咲しか知らない二人の時間。すべてがそこで収束されていく。
そして、最後に鮎美があけた遺書にいろんな意味があることを感じた。
エンドロールが流れる中、森七菜の歌声と小林武史の音楽がこの映画の世界を見事に包んでいた。
序盤に、裕里が乙坂に言う言葉。
『その人のことを想っていたら、生きていることになるんじゃないでしょうか』
この言葉が僕はこの映画のすべてを表わしている気がした。
ぜひ、みんなにも見てもらいたい作品だ、と思いました。
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