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執筆者の写真奥田 伸行

新しい芸術をつくった男

更新日:2020年3月12日

みなさん、「ハプニング」という言葉をご存知ですか? もちろん、ご存知ですよね? では、意味はご存知ですか? それもなんとなくご存知ですよね。 一応、意味は「偶然で、思いがけないできごと。」です。 ではこの言葉が美術用語だということはご存知ですか? この言葉はもともとなかった言葉なんです。 しかし、ある男がこの言葉を作り、誰もが知っている言葉にまでなったのです。 そのある男が、『アラン・カプロー』という芸術家です。 アランは、ニュージャージー州で生まれ、コロンビア大学で美術史を学び、その後、音楽家のジョン・ケージのもとで作曲を学びました。 ケージの偶然性を利用した作曲理論や、彼がブラック・マウンテン・カレッジで実践していた音楽、美術、ダンスなどを合わせた即興的な総合芸術がアランに多大な影響を与えることになります。 1959年、ニューヨークで『6つのパートからなる18のハプニングス』(18 Happenings in 6 Parts)ではじめてパフォーマンスを行い、これがハプニングという表現方法と「ハプニング」という言葉が生まれたきっかけになります。 カプローの活動の目的は「生活と芸術の統合」であり、日常性や即興性、演劇性を取り入れた表現活動の模索をしていました。 一般人や観客を巻き込んで、街中に突如大量のゴミや異物を出現させる「ハプニング」を通して、芸術と日常の境界を壊し、芸術家と観客の間の境界線や、演じる者と見る者の間の区別をあいまいにしてしまうことを狙いました。 またハプニングを続けるうちに、演者と観客の関係のみならず、演者の身体を取り巻く場所や空間などの「環境」、街に置く物体や演者がハプニングにおいて使う道具である「装置」を意識し始めたことで、環境芸術やインスタレーションの先駆者ともなり、後のパフォーマンスアートのあり方の影響を及ぼしました。

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